blog

芥川龍之介の「河童」の英語版は案外読み易い

Pocket

芥川龍之介の「河童」の英語版は案外読み易い

芥川龍之介

3行でまとめると・・・

芥川龍之介は数多くの短編を残している。「河童」もその一つだが、とても読み易く、多読の教材に適している。

もくじ

文京区は文豪と縁が深い
文京区×芥川龍之介
英語版「河童」を読む!
英語版「河童」を読む理由
まとめ

文京区は文豪と縁が深い

私たちAYM ENGLISHは、文京区を拠点とする英語塾です。
文京区といえば、多くの文豪と縁があることで知られています。
このシリーズでは、そんな文京区との繋がりが深い文豪の、
英語版作品を取り上げながら、あれこれ書いていきます。
今回の文豪は、芥川龍之介です。

文京区×芥川龍之介

芥川龍之介の作品で、文京区が登場するのは、「手巾(ハンカチ)という作品です。文京区に居を構えていた新渡戸稲造のお家が、小説に登場する教師の家のモデルとなっているそうです。残念ながら、英語版を見つけられなかったので、今回は、私が個人的に好きな「河童」という作品を紹介します。

英語版「河童」を読む!

河童」は、語り部である患者第二十三号の一人称で語られる、世にも奇妙な物語です。彼が長野の上高地を登山したときに迷い込んだ、河童の世界の伝聞録なのですが、これがまたおもしろい。人間とは違ったモラル、社会正義、秩序が存在し、時にユーモラスに、時にシニカルに描かれています。この作風が、当時の日本社会を批判したものであるとも言われています。

英語版「河童」を読む理由

実は、夏目漱石の「吾輩は猫である」とは違い、芥川龍之介の「河童」は大変読み易いです。文法自体も複雑ではないですし、単語も大学受験レベルなので、すらすら読めるでしょう。難点といえば、世界観が幾分というかかなり特異ですので、文章は読めても、文章の意味するところや物語のシーンが「?」となってしまうかもしれません。

なにより、日本語の原文が戦前の文語体なので、むしろ日本語版のほうが難しく感じるかもしれません。下に、冒頭の部分を引用してみましたので、日本語と英語と、比較してみましょう。

「河童」の日本語版と英語版を比較してみる

オリジナルの日本語版の冒頭は、こんな感じです

これは或精神病院の患者、――第二十三号が誰にでもしやべる話である。彼はもう三十を越してゐるであらう。が、一見した所は如何にも若々しい狂人である。彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでも善い。彼は唯ぢつと両膝をかかへ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄格子をはめた窓の外には枯れ葉さへ見えない樫の木が一本、雪曇りの空に枝を張つてゐた。)院長のS博士や僕を相手に長々とこの話をしやべりつづけた。尤も身ぶりはしなかつた訣ではない。彼はたとへば「驚いた」と言ふ時には急に顔をのけ反ぞらせたりした。……

旧かな使いが混じっているので、現代文に慣れている私たちには、ちょっと読みずらいかもしれませんね。これはこれで当時の書き方なので、味があるとは思いますけど。

続いて、英語版のほうを見てみましょう。

This is the story of Patient No. 23 in one of our mental homes. He will tell his story whenever he can persuade anyone to listen. He must be beyond thirty yet, at first glance, he has the looks of a man much younger. Perhaps it is the madness that gives him his youth. He’ll go through the experiences of half a lifetime, before he came to this home; how, for instance, how he… No, I think we should do better to leave such details for a while. He told his story at great length and in close detail as I listened with the doctor in charge of the mental home. All the time he spoke, he kept his arms clasped tightly round his knees. Occasionally he would glance out beyond the window where, through the iron grille, you could see a bare oak tree, with not even a single withered leaf left on the black branches reaching towards the threatening snow-clouds. He did make gestures to go with his words, but these were few. When he said, ‘I was taken aback’, for instance, he jerked his head back abruptly, and so on.

「吾輩は猫である」の時とは違い、妙に小難しい文法は使わずに、読みやすい文で書かれていますね。また、日本語版にはない、場面の補足であったり、省略があるところにも注目です。

例えば、「彼の半生の経験は、・・・」の対訳は「He’ll go through the experiences of half a lifetime, before he came to this home」ですが、日本語にはない「before he came to this home」という表現が付け加えられています。意味としては当たり前のこと(入院する前の話をしているのだから)なのですが、読者に優しい追加情報といえます。

また、「院長であるS博士」というところも、「the doctor in charge of the mental home.」となっており、「S博士」という固有名詞が省略されていることにも気がつきます。個人的には、(イニシャルとはいえ)固有名詞があることで、この物語自体が本当にあった出来事であるかのような印象を与えることが出来るので、どうせなら残してほしかったなどと思ったりしますが、些細なことなので気にすることはないでしょう。

このように、日本語と英語とで読み比べるのも、面白いかもしれませんね。

まとめ

今回は、芥川龍之介の名作「河童」を紹介しました。

文京区には、まだまだたくさん縁深い文豪がたくさんいます。文京区に数多くある名所を訪れながら、彼らの作品に触れ、当時のことに思いを馳せる。なかなか高級な勉強方法だと、思いませんか。

AYM ENGLISHでは、生徒の力に合わせたさまざまな教材を使った多読勉強法を実践しています。ご興味のある方は、問い合わせフォームから、ご連絡ください。ちょっと多読に興味があるんだけど、といった簡単な質問でも、受け付けております。

一緒に高級な勉強法を実践しませんか。

参考文献

青空文庫 芥川龍之介 河童

TUTTLE PUBLISHING Ryunosuke AKUTAGAWA KAPPA

Pocket

少人数だからできる生徒の興味関心に合わせた英語指導!高校入試から英検、TEAP、GTECなど各種英語試験まで英語学習を全面サポートする川口市にある英語塾です。