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書評 日本語は国際語になりうるか

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書評 日本語は 国際語 になりうるか 鈴木孝夫

国際語

言語を学ぶことの意味を考えるのにとてもよい本

イントロダクション

英語を教える学習塾のブログで、「日本語は国際語になりうるか」という題の本を紹介するのはどういうことだ?と思われる方もいるかもしれませんが、しばしお付き合いください。ちゃんと理由があるのです。

なお、本書はこれから大学で人文科・社会科学系、国際関係系の学部で勉強しよう・目指そうという高校2・3年生、もしくはすでに各学部に在籍している大学生にオススメします。もちろん、社会人として英語を勉強している大人や、高校生を子どもに持つ親御さんにもオススメできます。

私たちが生きる21世紀の地球において、英語が世界中で話されているのは、まぎれもない事実といえるでしょう。話されている、というのは、なにも公用語もしくは第一言語である、という意味ではありません。第一言語ではありませんが、例えばアメリカの映画は世界中で上映されていますし、シェークスピアの古典劇は世界中にファンがいるでしょう。日本を含む世界にある190カ国以上の国々が加盟する国際連合においても、英語は公用語(Official language)として認められています。今あなたがこのブログを読むのに使っているパソコンや携帯端末を動かすプログラムは、英語が共通語で使われています。このように、英語は私たちの生活圏を覆い尽くしている言語、まさに国際語である、といえます。

この状況の中で、では日本語は国際語になりうるか、という命題を突きつけてくる。これだけでまず目が覚める思いです。まさに、枠外の考え、「Out of box thinking」と言えるでしょう。英語を学ぼう!英語を話して国際人になるんだ!という高い志を胸に日々勉強しているあなたにとって、ともすれば異常な、あるいは国粋主義的な危険思想ともとれるかもしれません。そのあたりについては本文の中で否定しているので、詳しくは本書を読んでいただくとして、ここでは国際語としての英語と、国際語を目指す日本語の関係について、お話しようと思います。

本書の特徴

本書は80年代後半から90年代前半にかけて、著者の鈴木孝夫先生が書かれた小論文や講演を収録したものです。そう、すでに20年以上も前に出版された本なのです。この中で著者は、日本のアメリカ・ヨーロッパ偏重の状態、また、現在最もホットスポットとなっている中東・イスラム世界への日本の無関心を指摘しています。未だにアメリカとソビエトが冷戦を展開しているご時勢において、中東地域の政治的、経済的重要性を説いている、という点を考えると、著者の時代を見る先見性は評価できるでしょう。残念ながら、当時の指摘が未だに通用する、つまり、21世紀になった日本においても、未だに中東への理解が深まったとはいえないという状況は、嘆かわしくも感じると共に、今を生きる私たちは、今こそ国際的な視点を持って世界に進出していくべきである、とも言えます。

国際語としての英語

世界に進出する、ということで、当然ながら必要なものが出てきます。それはコミュニケーションです。日本を飛び出し、世界に進出していくと、外国の人との接触が発生します。その時に使うのが、英語、となります。日本語を話さない外国人と、彼らの母国語を話さない私たちがコミュニケーションをとるときに、英語を話すのは、英語がお互いの「共通項」として存在するからです。この「共通項」がすなわち「国際語」としての英語なのです。
この時に、私たちは、自分の英語が通じないのではないか、もっと突っ込んだ言い方をすると、「ネイティブが話す英語を話していないのではないか」と心配してしまいがちです。特に英語に自信がない方ほど、その傾向は強いのではないでしょうか。ここに、問題があると、本書は指摘するのです。

部族語ではない国際語としての英語

そもそも英語は、その名の通り、英国が発祥の言語です。英国がヨーロッパ大航海時代、植民地時代、産業革命などを経て、国としての影響力を拡大すると共に、世界に広めていきました。その過程において、アメリカであったりオーストラリアであったり、インドであったり、現在母国語として話す国が誕生してきたのです。その当時は、「英国人が話す言語」、英国族(アングロ・サクソン)の言語とでもいいますか、そういった側面が多分にありました。黒船でペリーが日本にやってきた頃でも、未だ英国の国家としての影響力は強大なものでした。よって、当時の人々が英語を学ぶことは、それはすなわち英国式の文法、話し方、文化を学び、真似て、吸収することも意味していました。

時は進んで21世紀。英国の影響力は当時のそれと比べてだいぶ落ち、一方でアメリカの影響力が断トツで大きくなっている、と言えます。しかし、それと同時に他の国々も力をつけ、また情報技術の発達で、いままでのような英国一辺倒、アメリカ一辺倒の時代ではもはやない状況となっています。英国もアメリカも、完全完璧にナンバーワンではない、むしろそれ以外の国々の人々との交流が活発になっている状況下において、未だに英国式、アメリカ式を信奉する、部族語としての英語をありがたがるのは、いささか時代遅れであると言わざるを得ません。なぜなら、英語は英国族が話す部族語から、世界各地で話される国際語として、その姿を変えているからです。

国際語としての英語

部族語から国際語へと変貌した英語。母国語として使う国のみならず、公用語、第二言語、さらにはビジネスやアカデミアの場面でも、英語は使われるようになって来ました。さまざまな場所で使われるということは、つまりさまざまな社会的、文化的バックグランドを持つ人たちが英語を使うようになった、ということです。地球上には70億人以上の人が住んでいるわけですが、そのうちの4分の1にあたる、17億人以上の人が使っていると言われています。その17億人がそれぞれ異なる文化的背景を背負って、交流しているのです。その中では英国式、アメリカ式一辺倒の様式がまかり通っている、と考えるほうが不自然であると言えます。人間は生まれ育った環境の文化、習慣の影響を受けて成長します。その個人の根幹にある文化的背景を、英語という外国語を使うからといって、それを簡単に捨て去って、英国式、アメリカ式の様式に染まらなければならない、と考えるほうが、無理があるでしょう。

日本における「英語」の姿

翻って、私たちの住む日本の現状を考えてみましょう。本書は20年以上前に書かれたものですが、その時の状況と現在を比べても、あまり変わっていないといえるでしょう。このままでは、世界的な潮流である「国際語としての英語」という概念を学ばず、昔ながらの「部族語としての英語」にしがみついてしまうことになります。もちろん、変化の兆しは見えてきています。世間でも「使える英語」を重視するようになり、学校の授業でも英会話に力を入れるようになってきています。それでも、目指す先、念頭にある英語の姿が「部族語」のままでは、本当の意味での「国際語」を学ぶことは難しいでしょう。

国際語としての日本語

では最後に、本書の題名にもなっている「国際語としての日本語」について触れたいと思います。

英語の取り巻く現状については、これまで述べてきたとおりです。「部族語」から「国際語」へと変貌を遂げた英語が、今や世界を繋げる言葉となっているわけですが、では日本語はどうなのでしょうか。いうまでもなく、日本語は、まだ日本人だけが話す「部族語」である、といわざるを得ません。しかし、例えば「Kawaii」であったり、「Anime」であったり、「Samurai」であったり、日本のカッコイイ、ユニークな文化を表す言葉は、外国でも通じるようになってきています。そう、日本語も、徐々にではありますが、「国際語」としての側面を築きつつあるのです。この本が書かれたのが20数年前ですから、その当時から比べると、この点においては、進歩があるといえるでしょう。本書ではまさにこのこと、つまり「日本そして日本人の世界進出には、日本語を部族語ではなく国際語としての地位を築くこと」が大事である、と訴えているのです。

日本の最大の武器は経済力です。またこの経済力を強固なものとするには、日本語が国際語として通用することが有効です。このような車輪の両輪のような関係が、国家と言語にはあるのです。さらに、日本語が国際語として認められるには、経済力はもちろんのこと、日本がより魅力的な国であること、豊かな文化、科学技術などを兼ね備えていることを、世界中に発信しなくてはなりません。この情報発信を、現在の国際語である英語を通して行なえば、さらに多くの聴衆に届けることが出来るのです。国際語である英語を通じて、日本を発信する。そのためには、部族語ではない、国際語としての英語を学ばなくてはならない。その先に、国際語としての日本語、という目標がある。これが、本書の訴えるポイントだったのです。

まとめ

普段から英語を学ぼう!という意欲に溢れている私たち英語学習者にとって、国際語としての日本語、という考え方は、新鮮で新しい視点を与えてくれます。また同時に、英語を学ぶこと、つまり国際語を学ぶこと、果ては自分の国について発信することが、どういった意味合いを持つのか、考えるよい機会となります。冒頭でも書きましたが、これから英語を学ぼう、という方はもちろんですが、人文・社会科学系の学部を志す高校生から大学生には、ぜひともオススメしたい一冊です。いかがでしょうか。

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